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「毎日ストレッチしているんですけどね……」
「腹筋も背筋も鍛えているのに、なかなか腰痛がよくならないんです」
治療室でも、こんなお話を聞くことがあります。
腰痛を何とかしたくて、ストレッチを始める。
筋力が足りないのかと思って、運動もしてみる。
それでも痛みが続くと、
「自分の腰は、どこか悪くなっているんじゃないか」
「動かしたら、もっとひどくなるんじゃないか」
そんな不安が出てくることもありますよね。
痛みが長く続けば、そう考えてしまうのも無理はありません。
ただ、慢性腰痛を考えるうえで、ひとつ知っておいてほしいことがあります。
痛みがあることと、身体が傷ついていることは、必ずしも同じではない。
今回は、この考え方についてお話しします。
そもそも、痛みは何のためにあるのでしょうか。
例えば、熱い鍋にうっかり触れたとします。
「熱っ!」
思わず手を引っ込めますよね。
これは、身体に危険が迫っていることを知らせるための大切な仕組みです。
痛みがなければ、やけどをしても気づかないかもしれません。
つまり、痛みは本来、身体を守るために必要なものなんです。
ところが、痛みが長く続く場合には、少し違ったことが起きていることもあります。
例えるなら、火災報知器。
本当に火事のときに鳴るのは大切ですが、少しの煙にも過敏に反応してしまったらどうでしょう?
実際の危険の大きさ以上に、大きな警報が鳴ってしまうことがあります。
慢性腰痛でも、痛みを感じる神経の働きが敏感になり、身体の状態だけでは痛みの強さを説明できない場合があります。
もちろん、腰の組織に問題があるケースもありますし、痛みが続く原因は人それぞれです。
ここでお伝えしたいのは、痛みが続いているからといって、必ずしも腰の傷みが進んでいるとは限らないということです。
痛みは本物です。
決して「気のせい」という意味ではありません。
ただ、痛みがあるという理由だけで、「腰が壊れている」「動けば悪化する」と決めつけなくてもよい場合があるんです。
腰が痛いとき、できるだけ動かないようにしていませんか?
もちろん、強い痛みがあるときや、身体の状態によっては、動作を控えたり、医療機関で確認したりする必要があります。
ただ、長い間、動くことを避け続けると、別の問題が出てくることもあります。
例えば、こんな流れです。
腰が痛い。
↓
動くと悪化しそうで、できるだけ動かない。
↓
筋力や体力が落ち、以前できていた動作がつらくなる。
↓
「やっぱり自分の腰は悪いんだ」と感じ、さらに動くのが怖くなる。
こうなると、痛みだけでなく、日常生活にも影響が出てしまいます。
買い物に行く。
掃除をする。
子供と遊ぶ。
趣味を楽しむ。
以前は普通にできていたことまで、だんだん避けるようになってしまうかもしれません。
こうした、痛みへの恐怖から活動を避け、さらに動きにくくなってしまう悪循環を「恐怖回避」と呼びます。
大切なのは、痛みを我慢して無理に動くことではありません。
身体の状態を確認したうえで、できることから少しずつ取り戻していくこと。
これが、慢性腰痛を考えるうえで重要な視点になります。
ここで、興味深い研究をご紹介します。
2026年10月に医学雑誌『Journal of Pain Research』に掲載された研究では、長く腰痛が続いている80人を、2つのグループに分けて比較しました。
ひとつは、ストレッチや筋力トレーニング、身体の使い方の指導などを行うグループ。
もうひとつは、それらに加えて、痛みの仕組みを学ぶことや、少しずつ活動を増やすこと、グループで運動することなども取り入れたグループです。
後者の方法は、身体だけでなく、心理面や社会的な要素も含めて考える「生物心理社会的アプローチ」と呼ばれます。
名前は少し難しいですが、考え方はそれほど複雑ではありません。
腰の状態だけを見るのではなく、
痛みに対して、どんな不安を感じているのか
痛みのために、どんな動作を避けているのか
日常生活で、どんなことに困っているのか
安心して活動を続けるために、何が必要なのか
こうしたことも含めて、改善を目指す方法です。
研究では、どちらのグループにも改善が見られましたが、身体への施術や運動に加えて、こうした取り組みも行ったグループでは、痛みや日常生活の支障などが、より大きく改善したと報告されています。
ただし、これは80人を対象にした比較的小規模な研究で、経過を追った期間も8週間です。
この結果だけで、すべての慢性腰痛に同じ効果があると断定することはできません。
また、複数の方法を組み合わせているため、何がどれだけ効果に影響したのかも、はっきりとは分かっていません。
それでも、慢性腰痛を考えるうえで、参考になる結果だと思います。
僕がこの考え方で大切だと思うのは、知識を得ることだけではありません。
実際に身体を動かしてみて、「思っていたより大丈夫だった」と感じる経験です。
例えば、腰を曲げるのが怖くて、床の物を拾えなくなっていた方がいるとします。
いきなり以前と同じ動作をする必要はありません。
身体の状態を確認しながら、できる範囲で動作を試してみる。
少し軽い物なら持ち上げられた。
短い距離なら歩けた。
立ち上がる動作も、工夫すればできた。
そんな小さな経験が積み重なると、身体に対する見方も変わってくるかもしれません。
「腰が痛いから、何もできない」
そう思っていたのが、
「まだ痛みはあるけれど、これはできる」
に変わっていく。
この違いは、日常生活を取り戻すうえで、とても大きいと思います。
もちろん、痛みを無視して動けばいいという話ではありません。
動作によって強い痛みが出る場合や、症状が悪化する場合は、無理をせず、必要に応じて医療機関に相談してください。
特に、足に急な力の入りにくさが出た場合や、排尿・排便に異常がある場合などは、速やかな医療評価が必要です。
「何でも動けばよい」ではなく、「自分の状態に合った動き方を見つける」ということですね。
腰痛が長引いている方にとって、痛みをなくすことはもちろん大切です。
でも、痛みの数字だけを追いかけていると、見落としてしまうこともあります。
以前はできていたことが、今はできなくなっていないか。
痛みが怖くて、やりたいことを諦めていないか。
腰のことが気になって、毎日の生活が窮屈になっていないか。
こうしたことにも目を向けてみてほしいのです。
ストレッチや筋力トレーニングが必要な方もいます。
身体の動かし方を見直すことで、楽になる方もいます。
一方で、痛みへの不安が強くなっていたり、動くことを避ける習慣がついていたりする場合には、そこも含めて考える必要があります。
同じ「腰痛」という言葉でも、原因や経過、困っていることは一人ひとり違います。
だからこそ、腰だけを見るのではなく、その方の生活や身体の状態を知ることが大切なのだと思います。
腰痛が続くと、不安になりますよね。
何をしてもよくならないと、「もう治らないのでは」と考えてしまうこともあるでしょう。
そんなとき、覚えておいてほしいことがあります。
痛みがあることと、身体が壊れていることは、必ずしも同じではありません。
痛みには、身体の状態だけでなく、神経の働きや不安、日々の活動など、さまざまな要素が関わっています。
だからといって、気持ちの持ちようで痛みが消えるわけでもありません。
大切なのは、自分の痛みを正しく理解し、必要な確認をしたうえで、できることを少しずつ増やしていくことです。
「痛みがゼロになるまで何もできない」ではなく、
「今の自分にできることは何だろう?」
そんなふうに考えてみる。
その小さな一歩が、腰痛に振り回されない生活を取り戻すきっかけになるかもしれません。
うちだ整骨院でも、痛みのある場所だけでなく、身体の状態や日常生活で困っていることを大切にしながら、一人ひとりに合った改善の方法を考えていきたいと思っています。
腰痛が長引いている方は、ひとりで抱え込まず、まずはご自身の身体の状態を知ることから始めてみてください。
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